7回の裏、最後のバッターが打ち取られると野球場に甲高いサイレンが鳴り響いた。
試合終了の合図である。
スコアボードには7-0の文字。
地元、木曽川高校のコールド負けである。
その中で、背番号7の選手を少し特別な思いで観戦していました。
彼との出会いは1ヶ月前、左下肢にギプスが巻かれた状態で来院しました。
制服に坊主頭、背は小ぶりですがいかにも野球部だと分かるいでたち。
帰塁時に足部を捻り、骨折してしまったとのこと。
腓骨骨折である。
最後の夏の大会前にして絶望的な怪我である。
しかし彼は、どうしても試合に出場したいとの訴え、すぐにでもリハビリを行いたいとのこと。
怪我以前はレギュラーであったが、骨折でレギュラー番号が貰えるかもわからない状態での強い意志である。
その後、ほぼ毎日当院に通い、地道な治療、トレーニングを行い、無事レギュラー番号を貰い、今日の試合を迎えました。
現実は残酷で、努力しても報われないものである。特にスポーツの世界では。
コールド負けではあったが、何かすごく胸に響く想いを感じました。
今日で、彼の高校野球生活は終わりである。
全国的には無名に近い公立高校が一回戦負けした試合だが、僕にとってどんな名門高校の名勝負より絶対忘れられない試合となりました。
特に第二打席、ショートへの内野安打を放った時、全力疾走で駆け抜ける背番号7の姿を。